声にできない“アイシテル”
「うう…、ア、アキ君…。
 アキ君!」

 私は彼の名前を呼ぶ。


 文字じゃなく。

 手話じゃなく。

 唇の動きじゃなく。


 私の声で、彼の名前を呼ぶ。


 すると、優しく私の髪を撫でてくれた。

「いい声だね。
 もっと呼んで」


 私は言われるままに、彼の名前を呼び続ける。

「アキ君、アキ君!」


 ずっと声に出して呼びたかった彼の名前。



 そして、彼の名前とともにずっと、ずっと言葉にしたかった想いを声に乗せる。


「アキ君、愛してる…」



 やっと言えた。

 やっと声に出来た。


 やっと、やっと、自分の声で“愛してる”を届けられた。
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