声にできない“アイシテル”
 彼女を抱きしめたまま、綺麗な黒髪を撫でる。

「チカ、一緒に帰ろう」


 それを聞いたチカは、一瞬目を泳がせた。

「でも、私は…。
 叔父様や叔母様に認められてないから…」

 そう言って顔を伏せる。


 そんな彼女をギュッと抱き寄せた。

「もう、何も問題はないんだ。
 チカは声を取り戻した。
 そして俺の本気を、あの2人は理解してくれた。
 だから、チカは何も心配することはないんだよ」


 うっすらと涙の後が残る彼女の頬にそっと触れる。

「大丈夫。
 安心して日本に帰れるよ」

「アキ君…」

 涙が滲み、再びチカの瞳を揺らす。




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