声にできない“アイシテル”
「はぁ?」

 いきなりそんなこと言われても、訳が分からない。

 だって、リレーのメンバーは全員揃ってスタート地点に向かったじゃないか。



「アンカーの長瀬の母親が交通事故で病院に運ばれたんだ。
 帰らせたから、代わりに桜井が走れ」


―――マジかよ・・・。

 ケガをした長瀬の親には悪いけど、こっそりため息をついた。


「でも、俺は・・・」



 ぐずぐずと座ったままの俺の腕を、担任がグッと掴む。

「時間がない。
 行くぞ!」


「え!?
 あっ・・・、ちょっと!!」


 その場から連れ出される。

 とたんに周りの女子達が騒ぎ出した。


「桜井君、走るの!?」

「うそぉ。
 デジカメ持ってくればよかったぁ」

「先輩、頑張ってー」



 耳が痛くなるほどの甲高い声を背中に受けて、俺は担任に引きずられていった。


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