声にできない“アイシテル”

ありがとう   SIDE:チカ

 アキ君と見つめ合っていると、不意に扉をノックする音が聞こえた。


「入るよ~」
 
 そう声をかけてきたのは、トオルさん。

 扉の隙間から顔をヒョッコリのぞかせて、ニコッと笑った。


 訳の分からない言葉を残していなくなり、私を混乱させたくせに。

 ニコニコとのん気に笑っているトオルさん。


 私は少し不機嫌になってしまう。

「ねえ、トオルさん。
 どうしてアキ君がここにいるの?
 ちゃんと説明してよ!」

「さっき言ったでしょ、退院祝いを用意してあるって。
 それが桜井さん」


「…は?」

―――アキ君が退院祝い?

 思わずきょとんとなる。


―――何を言ってるの?


 ますます訳が分からない。


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