声にできない“アイシテル”
 なんだか分からないけど、アキ君とトオルさんは仲直りできたようだ。

 病室に穏やかな空気が戻ってくる。


「じゃぁ、俺、そろそろ行くよ
 チカちゃん、元気でね」


「うん。
 トオルさんも元気でね」

 私はしっかりと握手をする。

「トオルさん、ありがとう。
 本当にありがとう!」


 言葉じゃ足りないくらい感謝してる。

 その想いを両手にこめて、トオルさんの手を握る。


「“お兄ちゃん”として、チカちゃんの幸せを願ってるよ。
 …桜井さんに冷たくされたら、いつでも俺のところにおいで」

 トオルさんが私にコソッと囁く。


 そのセリフを、アキ君は耳ざとく拾った。

「ご心配なく!
 俺とチカは一生仲良しですから!」

 後ろから私を抱きしめ、アキ君が大きな声で言う。


「ははっ。
 それは頼もしいことだね」


 吹き出したトオルさんは、私たちに手を振って病室を出て行った。


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