声にできない“アイシテル”
 扉が閉められて、また2人だけの空間になる。


「本当にいい人だね」

 横に立つアキ君がしみじみと言う。


「うん。
 自慢のお兄ちゃんだよ」 
 

「そのお兄ちゃんに怒られないように、チカを幸せにしないとな」

 アキ君はそっと私に身を寄せてくる。 


「アキ君がいてくれるだけで、私は幸せになれるよ」

 そう言って、私は彼の手を握った。

「一緒にいるだけで幸せだと思える人に出逢うことって、それこそ奇跡なんだろうね。
 しかも、相手も私と一緒にいたいと思ってくれるなんて。
 奇跡以上だよ」

 そっと彼を見上げる。


 アキ君も私を見ている。

「今なら両親に素直に感謝できるよ。
 チカは本当にすごいな。
 両親を許すことが出来たのも、生んでくれたことに感謝できるのも、チカのおかげだよ」


「なんか、そんな真面目に言われると照れちゃうよ。
 何にもしてないのに」


「その何もしていないチカが俺を変えたんだから、やっぱりチカはすごいって事だな」

 アキ君が私の手を優しく握り返してくる。


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