声にできない“アイシテル”
―――好きで走るんじゃないんだ。
   頑張るもんか。


 腹の中でブチブチと文句を言いながら、渡されたアンカー用のたすきをかける。


―――ちくしょう。
   あと少しで目立たないまま1日が終わるところだったのに。



 応援席ではしゃいでいる女子の集団を睨みつける。


―――絶対、絶対、本気なんか出さないからなっ!!


 そして、リレーはスタートした。




 このリレーの着順によって優勝が大きく左右される。


 ちなみに俺達赤分団は現在3位。
 
 1着でゴールをすれば逆転優勝できる。


 が、今の俺にはそんなつもりは微塵もない。

 手を抜いているのがばれないようにして、ビリでゴールするつもりだ。


 優勝なんか知るかっ!




 それに、同じ赤分団の3‐2のアンカーが1位になればいいんだ。


 何も俺が頑張らなくたっていいのだ。




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