声にできない“アイシテル”
―――ああ、これが“家族”っていうんだろうなぁ。


 この家の養子になってもう何年も経つけど、初めてそう思った。


 チカがいれば、その周りに笑いが絶えない。


 それは彼女がみんなを大切に思っているから。

 その気持ちが伝わって、みんなを笑顔にする。



 チカの仕草一つ一つには、いつでも“気持ち”が込められているんだ。


 それは声が出せなかった時も。

 声が出せるようになってからも。



 ほら、今だって。


 チラリと俺を見る視線には、ありったけの愛情が詰まっていて。

『大好きだよ』って言っているのが分かる。



 俺は指を絡めるようにチカの手を握り、素直な気持ちを視線で返す。


―――愛してるよ。


 2人で瞳を合わせて、静かに微笑みあった。

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