声にできない“アイシテル”
 あれから数年が経ち。

 私は5歳の女の子と、3歳の男の子のママになった。


 アキ君と結婚したことで、社長婦人にはなったけれど。

 副社長にはならなかった。


 アキ君が絵本作家を続けるようにって言ってくれたから。





 今は半年後に出版する本の製作を進めながら、自分の子供達にプレゼントする絵本を書いている。


 本のタイトルは“こころ とどけ”。



 気持ちを伝えるのは大切なこと。
 

 どんなにお互いが想いあっていても、すべてを読み取ることは出来ないから。

 自分の想いを相手に分かって欲しいのなら、はっきりと言わなければならない。



 だけど、言葉にしなくても伝わる想いもある。



 声を失って。

 アキ君に出逢って。

 それがよく分かった。



 子供達にもそれに気付いて欲しくて、絵や文字に私の気持ちを精一杯込める。
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