声にできない“アイシテル”
 ・・・と思ったのは初めのうちだけ。


 簡単に俺に近づけなくなった女子達はやたらに視線を送ってくるようになった。


 ささやかれる雑音もやっかいだけど、まとわり付く視線もやっかいだ。


 特に外で体育の時は。





「あ~あ」

 サッカーの試合の最中だというのに、俺は緊張感もなく大あくび。


「なんだよ、桜井。
 もっと気合い入れろよ」

 小山がふてくされた顔をしている。

「1点差で負けてんだぞ、うちのクラス」

 そういう小山はサッカーコートを走り回っている。



「こんなにじろじろ見られてたら、やる気なくすぜ?」

「贅沢な事言ってんなぁ。
 普通は女子に注目されると張り切るんだぜ」

「・・・悪かったな、普通じゃなくて」


 ため息混じりに呟く。

 脇の小グランドで、バレーボールをしている女子達はもちろん。

 奥のテニスコートにいる1年の女子。

 そして授業が行われている教室からも視線を感じる。


 うっとうしいったらありゃしない。


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