声にできない“アイシテル”
―――最近手紙とかがなかったのは、そういう理由だったんだ。


「松本はそれ以上のことはしなかったし。
 先生に言うほどでもないと思うんだけど。
 でも、一応お前に話しておこうと思って」


「わざわざありがとうな」


 俺が礼を言うと、滝沢は右手を軽く上げて教室を出ていった。






「ふぅ」

 ため息をついて、俺は席を立った。

 小山は担任に呼ばれているから、今日は一人で帰る。




「手紙が靴箱に入ってなくて、それはそれで気が楽だけど」



 俺の靴箱を断わりもなしに勝手に開けるのがムカつく。

 そして、俺宛の手紙を勝手に処分するのもムカつく。



 もらった手紙は読むつもりも、返事を書くつもりもないけど。


 その手紙をどうするかは俺が決める事だ。




「やっぱり、女って生き物は嫌いだ」



 日が落ち始めて薄暗くなった道を歩きながら、吐き出すように呟いた。
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