声にできない“アイシテル”

恋愛小説

 両手がふさがった俺の代わりに、彼女が図書室の扉を開けてくれた。


 中に入って、カウンターの上にドサリと本を下ろす。


 誰もいなくて静かな図書室。

 本を置く音が響いた。


「ふぅ」

 俺は短く息を吐いた。

 
 俺にとっても重く感じた本たち。

 彼女一人に運ばせなくて良かった。


 彼女は“ありがとうございます”と書いたメモを差し出して、ぺこぺこと頭を下げている。


「別に。
 大したことじゃないし」


“でも、すごく助かりました”

 まだ頭を下げている。


「もういいって。
 ・・・前もこんなシーンがあったよな?」


 俺が初めてこのこと会った日のことだ。


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