声にできない“アイシテル”
 俺が・・・心無い言葉で彼女を傷つけてしまった日。


 あの日も、俺に頭を下げ続けていたっけ。

 怯えたような顔で。



―――俺、そんなに怖い顔してたか?

 思い出して、ふっと笑ってしまう。


 そんな俺を見て、彼女はようやくお辞儀をやめた。






 運んだ本を棚に戻す作業を手伝いながら話しかけた。


「大野さんは本が好きだから、図書委員なんだろ。
 どんな本を読んでる?」


 彼女はちょっと首を傾げた後、メモにペンを走らせる。

“ミステリーとか、探偵モノが多いですね” 


「ミステリー?
 ちょっと意外」


“意外ですか?”

 どうして俺がそんな事を言ったのか分からなかったらしく、また首をかしげている。

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