声にできない“アイシテル”
 大学病院に着くと、準備はもうできていて。

 私はすぐに検査室に連れて行かれる。



 一通りの検査を終えてお母さんと待合室で待っていると、咽喉科の先生に呼ばれた。


「そちらに座ってください」


 先生は私のお母さんよりも少し年上くらいの女の人。

 その先生が難しい顔をして、私のノドの奥の写真を見せてくれた。


「チカちゃんのノドには腫瘍があります。
 ・・・残念ながら、悪性です」


 お母さんがはっと息を飲んで、口を手で押さえて震えている。


 私は“腫瘍”の意味が分からなくて、きょとんとするだけ。



「このままにしておくと、チカちゃんの命は・・・数年持たないと思います」


 お母さんは何も言わないで、ポロポロと泣き出した。


 先生の言葉、今度は私にも分かった。



―――死んじゃうの?
   私、死んじゃうの?!



 私の目からも涙がこぼれる。


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