声にできない“アイシテル”
―――なんだよ、怒ってんのか?



 確かに前を見ていなかった俺が悪いんだけど。


 ずっと無言の少女の態度に、俺の不機嫌さが増す。


―――でも、謝ったじゃねぇか。
   お礼も言ったしよ。


 
 さっきの雑音の事もあって、ついイライラとした強い口調で少女に言う。

「あんた、何で全然しゃべんないの?
 黙っていられると気分悪いんだけど」


 その言葉を聞いた少女は目を見開き、泣きそうな顔になった。


―――やべっ。

 言い過ぎたかと反省したけど、一度発した言葉は戻る事はない。




 でも。

 少女は泣き出すこともなく、頭をペコリと下げて足早に立ち去っていった。






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