声にできない“アイシテル”
「チカ。
 どこか痛いとかはない?」

 お母さんが心配そうに私の頭をなでる。


 私は首を横に振る。

 そして大きく息を吸った。



「手術、受けるから」


「チカ?」

 はっきりと力強く言った私に、お父さんとお母さんがまた驚く。


「昨日はいきなり“声が出なくなる”って言われて怖くなっちゃったんだけど。
 ・・・決めたんだ。
 私、生きたい」


 3人にニコッと笑いかける。


「手術さえすれば生きられるんでしょ?
 声が出なくたって生きていけるもん。
 話せなくなるのはつらいし、悲しいけど。
 世の中には腕が1本なくても、耳が聞こえなくても元気に生きてる人がいるんだもん。
 私だって、同じように元気に生きていけるよ」



 ゆっくりまばたきをして、お母さんを見た。

「先生に“手術してください”ってお願いしてね」 



 お母さんはもちろん、普段は泣いたことのないお父さんまで涙を浮かべている。
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