声にできない“アイシテル”
 私はまたペンを動かした。


“可愛いね、これ”

 ペンとメモ帳を軽く持ち上げる。


「俺が選んだんだ。
 気に入ってくれた?」

 得意そうに言ったのは圭ちゃん。


“すごく気に入ったよ”


「よかったぁ。
 2時間もかけて選んだ甲斐があったよ」

 エヘヘ、と圭ちゃんが照れ笑いをした。



 直接話はできないけど、こうやって文字にすれば会話になるんだ。


 こうやって、少しずつできることを見つけていこう。



 私はメモとペンを胸に抱きしめた。



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