声にできない“アイシテル”
 そういえば、いつからだろう。

 あんなに大好きだった恋愛小説を読まなくなったのは・・・。






 確か、中学2年の春だ。


 放課後、職員室から戻ると、何人かの男子が教室に残っていた。

 中から楽しそうな話し声がする。


「うちのクラスの女子で、彼女にするなら誰がいい?」

「そうだなぁ。
 佐川っていいよな。
 モデルみたいで、スタイルいいし」

「分かるー。
 俺的には山名かな。
 優しいんだぜ、あいつ」

「あっ俺、この前、指をケガした時に絆創膏もらった」

「山名は癒し系だよなぁ」


「じゃぁ、大野は?」


―――えっ!?


 突然自分の名前が挙がって、恥ずかしくて中に入れない。




 廊下で息を潜めて、男子達の会話の続きを待つ。


―――なんて言われるんだろう。

 ドキドキしながら、ちょっと期待している私。





 だけど、聞こえてきたのはあまりに正直ずぎる言葉。
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