声にできない“アイシテル”
「笑顔が可愛いんだけどさ、彼女にはしたくないな」

「話もできない相手とは付き合えねぇよ。
 どうやってコミュニケーションとればいいか分かんないし」

「いちいちメモを見せられると、盛り下がるしな」

「“好き”って言うのは、口に出して言って欲しいよ」

「それ、重要!!」

 アハハッ、と大きな笑い声が廊下にまで響く。



 私は唇をかみ締めて走り去った。




 突きつけられた現実。


 変えられない事実。




 それ以来。


 部屋の本棚からピンク色の背表紙や、可愛いイラスト付の本が消え。 

 暗い背表紙で、文字ばかりの小説が並んだ。



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