イケメン貴公子のとろけるキス

◇◇◇

オペラ鑑賞を終えた私たちは、再びホテルへと戻った。

今夜がルカと過ごす最後の夜。
明日の昼には、もうこの地を離れなければならない。
ルカといられる時間は、残りわずか。
そう思うと、胸が張り裂ける思いだった。

刹那的な感情が、私を一気にさらっていく。
部屋の前まで送り届けてくれたルカの手に、指を絡めた。


「ルカ……もう少し一緒にいたいの」


ふたりで過ごせる時間は、もうない。
後戻りできない感情に支配されるまま、心のままに口に出した。

日本にいるときの私なら、相手の気持ちもわからないまま、絶対に言えない言葉だ。
きっとそれは、ローマの空気がそうさせているに違いない。
官能的な夜が、私をそうさせているのだ。
ルカは、何も言わずに抱きしめてくれた。

切ない瞳も伝わる鼓動も、私の思い過ごしなの?
この腕の力強さは、どういう意味が込められているの?

ルカの気持ちはまったくわからない。

部屋のバルコニーに出て、私たちはデッキチェアーに並んで腰を下ろした。

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