イケメン貴公子のとろけるキス
ふたりだけの場所へ
デスクに頬杖を突き、パソコンの画面に映るローマの風景に思いを馳せる。
今頃ルカは、何をしているんだろう。
私は、最終日のあの日のことを思い返していた。
あの夜、世界中の時計をぶち壊せば、無情に呑み込まれる時の流れに逆らうことができるのにと、叶わない願いを抱いた。
それが無理なら、私の乗る便が、いっそのこと欠航になってしまえばいいのにと。
ルカと一緒にいられる術を考えて、考えて……。
それでも、どうにもならなかった。
時間が止まるはずもないのだから。
肝心なルカの本心も掴めなかった。
その場の雰囲気に流されて、ローマの夜景に惑わされて、私を抱いたのかもしれない。
そう考える方が理に適っていた。
肩で大きく息を吐く。
「八回目」
「はい?」
「ため息」
隣の席から、小夜さんが呆れた顔をして私を見つめた。
「ローマから帰って来て一週間も経つんだから、時差ボケってこともないでしょう?」