イケメン貴公子のとろけるキス
◇◇◇
社員食堂は、その日も大勢の従業員で賑わっていた。
広いフロア内に空席を探していると、遥か奥のテーブルで私の名前を呼びながら手を上げる人を発見した。
滝本くんだ。
その周りには、同期入社の仲間も数名いた。
テーブルに着くと、みんなはもうすぐ食べ終わりそうなところだった。
「そういえば、ミナ、早速連続有給休暇を取得したんだって?」
仲間のひとり、町田くんが食後のコーヒーを飲んでから私に尋ねる。
「うん」
同期で一番最初の取得者だと人事部の人に言われたっけ。
「イタリアに行ったんでしょう?」
麻巳子に聞かれてうなずく。
「大丈夫だった?」
「大丈夫だったって?」
なんのことかと瞬きを繰り返しながら麻巳子を見る。