イケメン貴公子のとろけるキス
「おいおい大丈夫かよ。ったく、わかりやすいな、ミナは」
涙目になった私に冷めきったお茶を渡してくれた。
お礼のつもりで頭を下げて、それを遠慮なくいただいた。
滝本くんが気づいても仕方ない。
そういう質問をしたのは私だ。
よくよく考えてみれば、ルカの気持ちが私にあったのだとしたら、帰国してからなにかしらのコンタクトがあってもいいはず。
連絡先こそ交換しなかったものの、日本とイタリアとはいえ同じ会社に勤めているのだ。
会社のパソコンのメールアドレスだってある。
私は気づかずに小夜さんに転送してしまっていたけれど、ルカが私のアドレスを知っているのは事実なのだ。
それなのに、ただひとつの手段である会社のメールアドレスにすら、なにも送ってよこさない。
ということはつまり、ルカにとって私は特別ではないということ。
思い悩んでいるのは、私だけなのだ。
イタリアでのことは、旅先のアバンチュール。
ひとときの戯れだったと。
トレビの泉で二度目に願った“恋愛成就”は、叶いそうにもなかった。