イケメン貴公子のとろけるキス

企画開発部に配属になって、採用された企画はまだふたつだけ。
余計なところで落ち込みポイントを発見してしまって、気分がどんよりと暗くなる。


「いい場所があるんだけど」


小夜さんの顔が、途端にパッと明るくなった。


「どこですか?」

「イタリア」

「イ、イタリア!?」


軽い気持ちで聞いたつもりが、突拍子もない提案には思わず椅子ごと仰け反る。

国内のひとり旅を大きく飛び越して、いきなり海外!?
しかも、ヨーロッパ!?

……ム、ムリムリ。

首を横に振って小刻みにワナワナとする私に、小夜さんはさらに提案を続けた。


「ローマ支社があるでしょう?」


確かにある。
首をゆっくりと縦に動かす。

小夜さんは私の薄い反応に若干戸惑いながら続けた。


「そこのスタッフに声を掛けてあげるから」

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