イケメン貴公子のとろけるキス
ルカの名前がそこにあった。
幻影かと一度目をぎゅっと閉じる。
ところが、再び見開いて凝視してみても、確かに彼の名前だった。
それを認識した途端、さらに心臓が張りつめる。
ルカが日本に来る。
しかも、私と同じ企画開発部へ。
十一月一日といったら、あと一週間もない。
ルカ本人はまだ実際に来日したわけでもないのに、緊張と不安で胸がヒリヒリする。
どうやって戻ってきたのか足取りも覚えていない。
デスクへ戻ると、小夜さんが「どうしたの?」と顔を上げた。
よほど呆けた顔でもしていたみたいだ。
「幽霊でも見た?」
小夜さんがクスクス笑う。
いっそのこと、幽霊のほうがよかったかもしれない。
ルカがここに来るなんて……。
「……ルカ、ここに異動してくるんですね」
表情筋に通常モードを言い渡し、冷静さを装う。
それでも心の中は動揺でいっぱいだった。