いざ、2次元の世界へ
「どういうことですか」
「…もしそれが、作られた記憶だとしたら?」
作られた、記憶…?
そういえば、ヤンキーが来たことを世界の狂いの始まりだとカエデが話してくれたとき、そのヤンキーはタイガに『あのときの恨み』とか言っていた、と聞いた。
その恨みが何なのか、ヤンキーたちとは誰なのかを、タイガが分からないのは、単に忘れているだけではなく、作られた記憶だからなのだろう。
原作にまだ出てきていないから、記憶がないままなんだ。
そう捉えてしまえば、納得がいく。
「ソウスケ。あなたの小学生の記憶は、飼っていたペットが亡くなったこと。じゃなくて?」
「……っ!」
図星だったのか、ソウスケは短い悲鳴をあげたあと、何も言わない。
「他は? 他には、何か覚えてる?」
その質問に答える者は、もはや誰もいない。
今の小さなやりとりだけで、原作者の権力の大きさが身にしみる。
私たちがどう頑張ったって、原作者という肩書きを持つお母さんには勝てっこないんだ。