CLUSH HONEY~V系彼氏と、蜜より甘く~
路地裏の高架下の暗がりに、胸に片手をあてるようにして立って、歌っている人影ーー



それは、紛れもない、キリトの姿だったーー。



「キリト……」


彼の邪魔にならないように、そっと近づいて、少し離れたところから眺めた。


彼は、時折り高架を走る電車の音に被せるようにして、歌っていた。


高く、澄んだ、艶のある美しい声だった。


暗闇に僅かに差し込む月の光が、スポットのように彼を照らして、

ぽう…っと白く、全身を浮かび上がらせていた……。


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