恋の処方箋SOS
消灯時間が過ぎて杏子が眠っても俺は喋り続けていた
何度めかの刺す手前で見廻りのナースに止められた
「比嘉先生」
見れば足元に血だまりができていた
「平気だからもうちょいだけやらせて」
ナースは腕を放そうとはなしないので諦めた
「止血しますね」
「痛くねぇよ別に」
「比嘉先生が壊れちゃったらこの患者さんがもっと悲しみます
比嘉先生きづいてました?この患者さん寝ながら泣いているんですよ
手当て終わりましたから床ふきますね」
「俺も休憩してくる」
杏子を助けるすべがないまま俺は喫煙所でタバコを燻らせていた
「お邪魔しますよお若いの」
みれば1週間前に手術をした蓮沼の爺さんだった
「医者から許可は降りてるのか?」
「どうせ短い命どう使おうがわしの勝手
お若いのタバコを一本くれませんか?」
俺はしかたなく火をつけたタバコを渡した
「あんた家族は?」
「わしは一人身、娘夫婦にも疎まれて」
「大変だな」
俺は腕の痛みに今さらながら顔をしかめて煙を吐いた
「傷の痛みなんて時間が経てば気にならなくなります
けど心はどうも具合がよくない壊れたらなかなか戻りません」
俺は灰皿にタバコを押し付けて蓮沼の爺さんに礼を言って杏子のいる病室に戻る手前ナースステーションに寄った
「比嘉先生」
「迷惑かけたな」
杏子の病室に寄って椅子に座って寝顔を眺めた
しだいに俺も眠ってしまったらしく傷の痛みで目覚めた
「っ・・・」
いがいにも杏子が起きていてこっちを見ていてびっくりした
「おはよ」
試しに声をかけてみたがやっぱり反応はない
そのかわり俺の包帯に直に触ってきてその激痛に顔をしかめた
何度も繰り返そうとするので俺は慌てて手首を掴んだ
そのいっしゅん手の甲におもいきり噛みつかれて早朝から俺は間抜けな声をあげた
しかも杏子はなかなか放さない寝ぼけてるにしては冗談がきつい
やべぇ感覚がなくなってきた、おもいきり自分の方にひくとイヤな音がして血管が裂けた
けどなんとか杏子から逃れられたわけで
声を聞き付けたナースが慌てるのもムリはない止血のためにきつく巻いた白衣が真っ赤に染まっていて杏子の口元もまるで真っ赤な口紅を塗ったようになっていた
俺は杏子の部屋からとうぜん出入り禁止をくらっていた
治療していた内海が笑う
「犬にでも襲われました?」
「飼い犬に手を噛まれましたよ」
「杏子ちゃんさどうしてそうなったんだい?」
内海はわざときつく縫合してから言う
「白石の洗脳」
「なら彼に聞いてみよう俺から」 

 
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