恋の処方箋SOS
やっとすべて片付いたのは23時で家に着くなり父親が居間に座っていた
避けるように2階にあがろうとしてやめた
「お父さんただいま」
「杏子おかえり、どうした?
コロッケ食べるか?おまえ好きだったろ
母さんのことは気にするなおまえはおまえのしたいようにしなさい」
てっきり怒られると思っていたので意外だった
私は父の揚げたコロッケが小さい頃から好きだった
コロッケを食べようとしてふと手をとめた
「少しもらっていい?」
「ああ、どこか行くのか?
明日も仕事じゃないのか?」
「ちょっとだけだから」
私はキッチンに置いてある食パンでコロッケサンドを作り玄関を出て大通りからタクシーを止めて病院に向かった
龍太郎たぶん今日は夜勤だよねたぶんだけど
あまり確証なかった
タクシーが病院で停まるとやっぱり夜は不気味だなと思う
夜間入り口から入り電話をした
「龍太郎?今どこ?」
「仮眠室おまえは?」
「病院」
「迎えに行くから動くなよ」
龍太郎が一階に来てくれて私はランチボックスを手渡した
「夜食」
「一緒に食うか?」
「うん」
龍太郎は自分の診療室に案内してくれてコーヒーをいれてくれた
「病院って夜はちょっと怖いかも」
朝のようなわだかまりも昼のようなぎくしゃく感もなく普通に話せた
「そうだな」
龍太郎の差し出してくれた猫のマグカップは2つで1つになるデザインだった
来客用だろうかそれとも私物?私物だとしたらちょっと痛いかも
「このマグカップかわいいね」
「だろ?ドイツ土産だ」
「ドイツ?」
「医者の勉強」
なるほどね医者も大変だなぁとつくづく思う
「お昼はごめんね」
龍太郎はコロッケサンドを頬張りながらコーヒーを飲んでから軽く考えていた
「本当に別れたい?つかうまいなこれ」
私が答えられないでいると龍太郎の外線が鳴る
「比嘉先生いまどこです?」
「ああいま行く」
「龍太郎、私もうダメかもしれない」
甘えたところでなにも変わらないのはわかっていたけど少しでいいから話しをきいてほしかった
「また後でな」
龍太郎は仕事に行ってしまったし今日は帰ろうかな
「おくりますよ?」
「うわっ出た」
「そんな人をお化けみたいに言わないでください」
「白石先生」
「ちょっとやり残した仕事をしてたらこんな時間になっちゃいました
おいしそうですねこれ」
白石先生はそう言いながら最後のコロッケサンドを食べてしまった
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