恋の処方箋SOS
「はぁまあそれはいいことですね」
ポツリポツリと言葉を紡いでいく白石先生がかわいくみえた
「あなたと龍太郎先生がうらやましかった、ただそれだけです
あなたの初めてが僕で申し訳ありません」
それを言われて頬が赤くなる
「いえ」
なんと返していいかわからず私はただいえとだけ答えた
「許してほしいなんて今更いいません、ただ最後にキスをさせてくださいね」
私の意見を聞かずにそっと優しくキスをした
「っ・・・」
「やっぱりあなたからは龍太郎先生の匂いがする
タバコの味がします」
「最後って」
「最後です」
意味深な言葉を残して白石先生が去っていくと今度は小さな女の子が病室を眺めていた
今日は来客が多い日だなぁと思いながら声をかけた
「こんにちは」
女の子はびくっとしながら近づいてきた
こんな小さな女の子が病院に一人でいるなんて迷子かな
「こんにちは」
女の子が小さな声で答えてくれた
「迷子?」
私が訊ねると女の子は首をぶんぶん振った
「龍兄ちゃんに会いに来たの」
たつにいちゃん?いったい誰のことかと思案したが龍の字がつく人物は私はただ一人しか知らない
龍太郎だ
龍太郎ならなにか知ってるかもしれない
女の子の手を引いてエレベーターで1つ上の5階に行く
そして龍太郎の病室のドアをノックして中に入った
「龍兄ちゃん」
嬉しそうにパタパタ走る彼女を龍太郎が優しく抱き留めた
「美奈」
「龍太郎の隠し子?」
私は龍太郎を見ながら言った
「違う違う内海の子」
「えっ?」
美奈はニコニコしながら自分の名前を言う
「内海美奈です、4才になったんだよぉ」
かわいいかわいすぎる私は美奈ちゃんを抱きしめた
美奈ちゃんはクマのポシェットから飴玉を取り出すと私と龍太郎に1つずつくれた
「ありがと」
「龍兄ちゃんパパは?まだお仕事?」
「いや病院内にはいると思うが探しに行くか?」
「美奈」
するとタイミングよく鋭い声がした
「内海、疲れてんのはわかるけど厳しすぎないか?」
「龍太郎あのな子供は甘やかしたらダメなんだぞ」
美奈は俺の傍から離れない、きっと叱られると思っているんだろう
「美奈はいい子だもんな」
「龍太郎おまえなぁ」
はあとため息をつく内海の気持ちは親心だろう
私は内海先生に訊いた
「美奈ちゃん一人で来たんですか?」
「莉菜の母親が1階のロビーにいるよ」
「お姉ちゃんと行こっか」
「うん」
本当に美奈ちゃんは素直でかわいくていい子だ
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