恋の処方箋SOS
「まさかタバコの箱の中にあれが入ってるなんて思わなかったけど」
「言うなよいちいち」
「おまえらなぁ修学旅行じゃねぇんだぞ」
「内海?!いつからいたんだよ?」
「いま来たとこだが杏子おまえも部屋に戻れ」
私は手を振り自分の病室に向かった
「なんか用?」
「杏子は明日には退院だ」
「そっか」
「おまえなぁここ病院だぞ?」
「はいはい内海先生」
龍太郎は杏子と出会っていい意味で変わった
たぶんこれからも変わっていくんだろうなこいつは
夕食を龍太郎のテーブルに置いて薬剤師になんとか頼み込んで作ってもらった龍太郎のための薬をテーブルに置いた
薬剤師に聞けばなにかに混ぜてもいいと言う
動物となんらかわらないような対応
「これなら飲めるだろ、飲めなかったらゼリーにでも混ぜてやる」
「俺はガキか、媚薬がきれたら飲むよ」
「媚薬?」
内海が眉を潜め俺の食べようとした玉子焼きの皿を取る
「内海、返せって」
「健全な入院生活をお願いできないか?」
「わかったよしかたないだろ飲ませられたんだから」
「おまえは普通の薬は吐き出すくせにそれは吐き出さないのか」
「息が苦しくて飲みこんじまったんだよ」
龍太郎は俺から皿を奪うと満足気に玉子焼きを頬張る
玉子焼き好きなのだろうか?杏子が龍太郎が菓子パンをおいしそうに食べていたと言っていたから甘党なのだろう
「うまいか?」
「ん?」
「玉子焼き」
普段ならかわす質問に龍太郎は意外にも笑って答えた
「玉子焼き好きなんだよ」
龍太郎は味噌汁を飲みながら珍しく続けた
「俺の家はさ金持ちで毎日バカみたいな高級料理が並んでた、俺はそんなんぜんぜん望んでなくて味なんかわからなかった
だからある日さ母さんに内緒で料理人に頼んだんだ玉子焼きが食いたいって
料理人はさ母さんには内緒ですよって作ってくれた
けどさ後でさんざん母さんにその人が怒られちゃって
坊っちゃんは悪くないです悪いのは私ですからって辞めちゃったんだ」
「そうか大変だったな」
「いかないのか?サボってると佐和子さんに怒られるぞ」
「だな」
内海を見送り残りの夕食を片付け少し眠った
目を開けると暗い病室で一瞬びっくりした
巡回に来た看護婦が懐中電灯片手に近づいてきて言う
「眠れませんか比嘉先生?」
「まあな」
「傷が痛むなら報告しますけど」
俺はそうじゃないと慌てて引き留めた
「大丈夫だから」
俺は一人きりの病室の重圧に耐えきれず喫煙所でタバコを吸っていた
「龍太郎先生」
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