恋の処方箋SOS
龍太郎はそのままコンビニに行ってしまい私は車内で待つことにした
しばらくして飲み物がコツンと当たる感触がしてそのまま口を塞がれた
名残惜しそうに舌で唇を舐めてから離れる
「あと半日おまえはどこに行きたい?」
私はしばらく考えてから答えた
「海いきたい」
龍太郎は缶コーヒーを一口飲んでから車を発進させた
車はどんどん都心から離れていく
ずっと高速道路を眺めているのにも飽きた頃、やっとキラキラした水面がとびこんできた
「キレイ」
龍太郎は疲れているのかなにも話さずに海沿いの小さな診療所に車を停めてハンドルに突っ伏してしまった
私は車を降りて診療所の磨りガラスを叩いた
中から現れたのは酒瓶を片手にしたお爺さん
「すまないが帰ってくれ」
「でも龍太郎は具合が悪いみたいで」
ちらりと車の中を見てからしかたなくため息をついた
「しかたないのう、久しぶりじゃな龍太郎」
私は龍太郎を知ってることに驚きながらも助手席を開けた
なんとか龍太郎を診療所のベッドに寝かせた
「熱があるんですか?」
体温計を見せられて唖然とした39度
「こんなんでよく動けたもんじゃわい」
次に取り出したのは薬液で満たされた注射器それをゆっくり腕に刺した
「っ・・・」
「あなたは?」
「龍太郎はバカ弟子」
それだけ言うとその人は部屋を出ていってしまった
なにやってるんだろ私
しばらくして控えめなノックの音がしてサバサバとした元気いっぱいの声がした
「ごめんね~爺ちゃんからきいたお客だってあんたら」
「あっえっ」
「夕飯たべてくでしょ?夜道は暗いし2階は部屋があまっってるから好きに使って」
「あっでも」
「しかしデカイ車だねあんたら都会から来たんだろ?
ちょっと車動かしたからはい鍵」
「ありがとうございます」
「彼氏?」
ちらりと龍太郎の方を見てから言う
「彼氏じゃないです友達」
「ふーん、あっもうすぐご飯だけどこっちに持ってこようか?」
私は食欲がなかったがとりあえず頷いた
「私なにか手伝いますよ」
「じゃあ2階においで」
古い木の階段がギシギシ鳴るなか2階にあがった
電気は昔の裸電球でほの暗い灯りが余計に不気味に感じた
「大丈夫なにもでないから」
笑いながら言う彼女に続いて部屋に入った
「私が前に使ってた部屋とりあえずこれ」
手渡されたTシャツと短パンとタオルを受け取った
「お風呂に案内するからついといで」
「あの名前」
「ごめん私は茜ここの娘でたまに帰ってきてるの」


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