黒胡椒もお砂糖も
私はあなたを忘れるから。4年間だったけど、幸せだった結婚生活も、その後の酷い苦しみも全部、私は忘れるから。
あなたも私を忘れてちょうだい。
全部全部、忘れてちょうだい。
そしてもう二度と会わないわね。私達、本当にもう赤の他人になるのね。
ちょっとふらついたけど、何とかドアまで歩いて行く。振り返って彼を見た。
「家族を大切にしてちょうだい」
そして入ってきた時は乱暴に開けたドアをゆっくりと開く。最後くらい、笑えるかな、私。
頑張ってみようかな。
口角を上げて、目を細めた。すごくブサイクで中途半端な笑顔だったと思うけれど、これで精一杯だった。
「・・・さよなら、誠二」
そして懐かしいそのドアから、手を離した。