黒胡椒もお砂糖も
4、絡んだ指
元夫の事務所から自宅に戻った私は、虚脱して座り込んでいた。
体が冷え切っているのにぼーっとしていて、くしゃみをしてからやっと暖房をつける。その時に気付き携帯を見ると、やっぱり陶子から大量の着信とメールが来ていた。
「・・・ああ、陶子、ごめん」
一人でボソッと謝る。
繁華街に置き去りにしてきたんだった。しかも、いい逃げで。彼女の心配はいかばかりだったことやら。
とりあえずメールを返すことにした。
『大丈夫よ、ちゃんと帰った。明日電話して説明する。今日は許して』
「送信っと・・・」
言いながらボタンを押し、携帯をカーペットの上に転がして寝転がった。
・・・ついに、終わったんだなあ~・・・。本当の意味で、私の結婚生活が。
天井を見上げながら思った。付き合いだした学生時代からの、色んな誠二を思い出していた。
だけど今は涙は出なかった。
さっきめちゃくちゃに暴れたせいで泣くほどの体力が残ってないのか、それともよっぽどスッキリしたかのどっちかだろう。
でもいいや。もうあいつのことで泣きたくないの、私。
不倫相手を妊娠させてしまったから、子供のいない妻を離縁してそっちと結婚した。そういう意味では自分の行動に責任を取ったわけだよね・・・。