黒胡椒もお砂糖も
ハッとして口を押さえた。コンビニ内の人間が何事かとこっちを見ている。・・・目立っちゃった・・・。
「すみません・・・」
くっくっく・・・と低い笑い声がして振り返ると、ミスターパーフェクト、高田さんが居た。
楽しそうに瞳を細めている。
私は大声を上げてしまったことに狼狽して真っ赤になっていた。
「・・・いきなりは止めて下さい」
まったく、何てことをするのだ、この人は!低い声と一緒に息が耳朶を掠めていて、それにぞくりとした事は忘れようと勤めた。
いつでも無表情の彼が笑っている。それを珍しく思う余裕もなく、私は真っ赤なままでストッキングを一つ掴んだ。
「マニキュアで補修はしないんですか?」
放ってはくれないらしい。
仕方なくため息をついて、彼に向き直る。
「これは予備です。ロッカーに入れておくんです」
「ああ、成る程」
レジへ向かうと後ろから美形がついてくる。コンビニの中の女性が一々振り返るのが鬱陶しかった。
無言で会計を済ませる。いつもよりレジのお姉さんの愛想までよくてますます面白くない私だ。
「・・・高田さん、買い物はないんですか?」
ガラスドアを開けながら聞くと、はい、と返答が来た。
「アポからの帰りなんです。尾崎さんが見えたからこっちに寄っただけで」
思わず唸り声を上げるところだった。