黒胡椒もお砂糖も
アウチ!アポだったのか~・・・そして今日はこのフロアに駐車したんだな。いつもの壇上表彰コンビの姿が見えなかったから油断していた。まさかビルの地下で見付かるとは!
仕方なく黙ったまま美形を後ろに連れてエレベーターホールへ。同じくエレベーターを待っていた他の会社の女性社員がハッとしたように高田さんを見ていた。
ドアが開いてバラバラと人が乗り込む。私も続こうとしたら、ぐいと腕を引っ張られて体が前へ進まない。
「え?」
何で止めるのよ。そう思って振り返ると、高田さんはエレベーターのボタンを押して待っている女性に、どうぞお先に行ってください、と静かに言った。
「え、乗らないんですか?」
私が聞きたかったことを彼女が聞いてくれる。高田さんはええ、と頷く。残念そうな顔をして彼女はエレベーターを閉めてしまった。
「え、ちょっ・・・」
何なのよ!?怪訝な顔して振り返ると、次のエレベーターが来てドアが開いた。
「乗りますよ」
え?私は高田さんに引っ張られてエレベーターの中へ。ってか、何でさっきのに乗るのはダメだったわけ?一体何よ~!?
わけが判らなくて混乱した私と高田さんだけを乗せてエレベーターは閉まる。
・・・おいおい、二人っきりじゃないのよ!
もしや!ヤツの狙いはこれか!と私が気付いた時には、高田さんと向かい合わせになって手を握られていた。
「えっ・・・あの!?た、高田さん、何を・・・」
わたわたと私は慌てる。畜生、また上ずった声が出てしまった!
高田さんは黙ったままで、私の右手を広げて指の間に自分の指を差し込む。