黒胡椒もお砂糖も
慌てて振り向くと、高田さんはちらりと一瞬こちらを見て、また淡々と言う。
「・・・そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ」
ぐっと詰まってしまった。
・・・怖がってねーし!一応反論してみたけど、心の中で言ってる辺り完全にのまれている。
「俺がお腹空いたんです。すみませんが、少しだけ寄り道いいですか?」
「・・・はい」
もう車降りれないし、はっきり言って私に選択権ないじゃん・・・。どうにでもして。私は更に諦めモードを醸し出しながら助手席に身を沈める。
だけど、高田さんが言った「少しだけ寄り道」は本当に、少しだけ寄り道、だった。
車をそのままファストフードのドライブスルーに突っ込んだのだ。
――――――――あれ?
私は驚いた。
だって、資金も潤っている(に違いない)エリート営業で、普通の男性でも格好つけそうな状況下(女性連れ、しかも彼の言うところの惚れている女性)なのに、まさかドライブスルーはないでしょ、と思って。
「高田さん?あの・・・」
私があらあらと思っているうちに、彼は注文を済ませてしまう。何か要りますか?と聞かれたから首を振ると、自分の分だけ(でも大量に)注文していた。
え?ってことは運転しながら食べるつもりなのかしら・・・。うわあ、それは流石に申し訳ないでしょ。私が運転してるんならともかく。