黒胡椒もお砂糖も


 ハンバーガーの包み紙を手で潰しながら、高田さんが言う。

「食べて下さい、これで良かったら」

「ありがとうございます。すみません・・・」

 超恐縮・・・。

 でも美味しかった~!ファストフードなんて滅多に食べないけど、たまに食べるとやたらと美味いのは何故だ。止まらない指を恨めしく思う。車内には食べる音だけ。

 さすがに人のご飯を横取りして沢山食べることだけはどうにか止めて、私は指についた塩を舐める。隣では美形が同じことをしていた。

「ご馳走様です」

「いえ」

 簡単に会話も終了する。ちょっとだけ食べたそれのせいで、私はかなり空腹を感じていた。

 お腹、空いた。

 そして静かな車内。

 男性と二人、だけどもそこに緊張感はなかった。

 助手席のシートに深くもたれかかる。

 ・・・この空気は嫌いじゃない。むしろちょっと落ち着くかも・・・。元夫の誠二もどちらかと言えば、平林さんのように愛想の良いよく話す男だったから、男性と居て静かに過ごすことってそんなになかった。

 ペーパーナフキンで手と口元を拭って、高田さんは相変わらず外の風景を見詰めている。

 もしかしたら隣に私がいるのは忘れているのかも・・・そう思ったら、ちょっとムカついた。

 ―――――――え?

 ・・・いやいやいや、どうしてムカつくのだ!そんなことないでしょ、気にならないでしょ!

 一人で問答をしていたら、彼がゆっくりと口を開いた。


< 151 / 224 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop