黒胡椒もお砂糖も


 真っ直ぐに彼がこちらを見る。口元にはまた楽しそうな笑みを浮かべていた。

「・・・へえ、あいつが」

 何でニヤニヤしてるのだ、この人。別に笑うところじゃないでしょうよ、さっさと教えてくれよ~。地団駄踏みたい気分だったけど、さすがにそんなことはしなかった。

「それはどういうシチュエーションで?」

 あ、この人完全に楽しんでる。高田さんは平林さんにはコンタクトの一件を話してないのだなと思った。私は忌々しく思いながらも、情報が欲しくて仕方なく話す。

「詳細省きますが、一度高田さんと買い物に出かける必要が生じまして、その時に気になってた営業の仕方を聞いたんです。ほら、あの人無口だし・・・」

「ああ、気になったんですね。重要事項の説明とか本当にしてるのかこいつ、と思ったんでしょう」

 今では完全にからかいモードで平林さんは矢継ぎ早に言葉を放ち出す。

 うおっ!バレたか!私は少し自分の目が泳ぐのに気付いて、動揺を隠すために腹に力を入れる。・・・つまり、皆考えることは一緒ってことだよね。

「・・・で、何ですか?どういう営業方法なんでしょうか」

「気になるの?」

 この男のニヤニヤを止めたい。・・・殴ったら止まるだろうか?私はため息をついた。殴ればにやけは止まるだろうけど、平林さんは行ってしまうに違いない。それはダメだ。

「気になります」

「どうして?興味ないって言ってた高田のことを知りたいってこと?」

 ・・・ムカつく。イライラと私はつま先で床を蹴る。も~!


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