黒胡椒もお砂糖も
だけど平林さんはむかっ腹立てた私をさも面白そうに観察して、こうのたもうた。
「今日は時間ないから、また今度」
―――――――は?
私はあんぐりと口をあけた。
いやいや、このおっさん!
「・・・私をからかってる暇があったら教えて下さいよ」
「ダメ。2月戦が終わったら、一緒に飲みに行きましょう。戦争中に簡単に営業方法は漏らせないでしょ」
くそう・・・。2月戦に利用しようと思ってたの、バレてる・・・。
ムスッとして膨れた私に平林さんは携帯を取り出す。
「そういうわけだから、尾崎さんの番号教えて下さい」
「え?」
何だって?私は彼の握る携帯電話を見詰める。
「都合ついたら電話します。メルアドにしようか?メールの方が邪魔じゃない?」
いや、そうではなくてですね・・・。私は手で額を押さえた。うむむ・・・彼が優秀な営業であるのはここか!と思った。何て上手な揺さぶり方。
今、私は教えて欲しい情報があって、それはつまり、平林さんの強みなわけだ。弱みを握られている私は彼に個人情報を与える必要がある・・・。
教えたくない。この喧しいミスター愛嬌の営業には、自分の携帯番号を教えたくない。
だけどだけど、高田さんの営業秘密は是非とも知りたい。だってもうそんな機会は巡ってこないだろうし。そして本人は教えてくれなかったのだ。指定された男は平林さんだけだし。
くっそ~・・・。