黒胡椒もお砂糖も
「最近尾崎さん体型も雰囲気も変わったしいきなり成績入れ出したから~、皆でどうしたんだろって話してたんですう~。出入り先に恋人でも出来たんですか?その彼の斡旋で同僚さん達が入ってくれてるとか?」
――――――・・・ああ、やっぱり。舌打を堪えてぐっと拳を握り締める。
客の男性に色気で迫ったのではないか、と彼女は言っているのだ。
女性ばかりの営業部だ。特に記念月で多忙な時は、競争も激しくなるし、やっかみや僻み、足の引っ張り合いは多発する。
私は今まで地味で影に紛れ込むようなガリガリの不幸そうな女だった。だから多少成績を上げても面と向かって喧嘩を吹っかけてくる人はいなかったのだけれど、平林さん達と話す場面をよく目撃されて体型が元に戻りだした去年の12月あたりから、他の子達からの視線にトゲを感じることがあったのだ。
朝礼台の後ろのグラフを見る限り、弓座さんは苦戦しているようだ。まだ0.5件しか入っていない。副支部長が私に言っていたことを全部聞いていたに違いない。
「私は恋愛運がないみたいなの。そろそろ2年間、恋人もいないわ」
敢えてニッコリと笑顔を作って返すと、弓座さんは更に意地悪そうな顔をした。
「・・・ふーん。でも平林さんや高田さんに引っ付いていってるんですよね?彼等からお客さん回して貰ってるんですか?」
机で額を打ち付けそうになってしまった。
思わず振り返って彼女の顔をガン見する。・・・・何だと!?平林&高田ペアに、私が何だって!??
「――――――は?」