黒胡椒もお砂糖も
そこで私は今度はこちらから攻撃することにした。言われっぱなしは性にあわないし、彼女は私を陥れようとして間違った言葉の使い方をしたのだ。そこは是非指摘してあげないと、ね。
私は真面目な顔で言う。
「それに、あの二人が人に契約を回すなんてお客様をバカにするようなことをするとは思えないけど。もしかしてそういう噂が出回ってるの?あの二人ってそんな卑怯なことして――――――」
「いいえ!そ、そんな事はないんですけど~」
急いで否定する弓座さんをまだ真面目な顔で見詰める。心の中では嗤ってやった。まだまだ若いね、お嬢さん。金融会社の営業ばかり9年している女をなめるなよ。
顎に人差し指をあてて首を傾けてみせた。
「でも火のないところに煙はたたないっていうし。弓座さんがそう言ってたって、私から平林さんに――――――」
「尾崎さん!」
今では顔を引きつらせ、血色の悪い顔で弓座さんが懸命に言う。
「ごめんなさい、あたしの勘違いです!すみません、全然そんな噂はないんですけど・・・お、尾崎さんが彼等と仲がいいから・・・」
私は口元を緩ませる。安心させるようににっこりと笑った。
「平林さんと私は同じ年なの。それが判ったから話しやすくはなったけど、追いかけてると思われるのはとても心外だわ。それに私も12月に自分で動いて必死で出入り許可を取った場所からの契約なわけだし、回して貰った契約だとか、変な噂が流れていたら止めてもらえる?」
彼女は引きつったままで笑って頷いた。
「はい!判りました~」
勝った。
机の下でピースサインをかましてやった。