黒胡椒もお砂糖も
その言い方に笑ってしまった。うーん、大事だわ、このテンションも。
「構わないけど・・・うーん、違うよね、ごめん。有難いと思ってる。だけど平日ですよー?大丈夫なの、仕事?」
今年のその日は木曜日だった。二人とも別に休みはあってないようなものだけど(私は営業職、彼女は自営)、やはり木曜日の夜に飲むと金曜の朝の辛さは半端ない。そんな年なのだ。無理はきかない。一応聞いておかねば。
陶子は電話の向こうでケタケタと笑う。
『私をなめんじゃないわよ!まだ30代も前半でしょ!?オールで会議でもオッケーよ!!』
え。私は上半身を起こしながら驚く。・・・嘘でしょ、そんなのごめんだわ。化粧が顔面で油とまざって恐ろしいことになり、睡眠不足でクマもしわも一気に浮上し、妖怪みたいな外見になるっつーの。そしてそのあと3日は疲れが取れない・・・。
まだ30代前半・・・・ポジティブ万歳だね、陶子さん。そこで「もう30代」と思ってしまう私が老けるわけだよ。
「・・・じゃあ、大丈夫なら付き合ってくれる?ホテルの最上階バーで終電までグダグダする予定なんだけど」
ホテルの名前を伝えると、おおー!と歓声が聞こえた。
『そんな所いくの?オッケー!なら気合いれてお洒落していくわ~!』
私は笑う。待ち合わせはバーにして、ちょっとは何か食べてから来てねと伝え、電話を切った。
そうだ、私もお洒落して行こう。そして気分よく酔っ払い、女友達と笑って、男なんて~って言いながら周囲の雰囲気には配慮して小さく盛り上がろう。
気分が良くなって来てくふふと笑う。
そして晩ご飯を作るために立ち上がった。