黒胡椒もお砂糖も


 ベージュの光沢あるマーメイドタイプのドレス(年齢を考えてミニドレスは遠慮した)、同じくベージュに光る7センチのヒールシューズ。そして耳朶の端、落ちそうなところで光るダイヤモンドのピアス。

 休日に買ったそれらを嬉しく思い出しながら飛ぶ勢いで部屋に戻り、とりあえず先に家事をしてからお風呂に入る。

 ピカピカに磨き上げて、ボディークリームをたっぷりと塗りこむ。肌に艶が出て光るまで撫でた。

 髪はブローして前髪はさらりと分ける。サイドは後ろへ梳いて、あとは毛先をまとめるためのワックスを少々。

 口にミニサンドイッチを突っ込みながら、クローゼットを開ける。

 そしてフレンチスリーブのドレスに腕を通す。いいものを着ることが久しぶりで、本当にドキドキした。男に告白されるよりもいい気分だわ、そんな感想が出るくらいのドキドキ感だった。

 しゃらりと肌を撫でて柔らかく纏う。ベージュの柔らかい光が顔にあたり、肌の色まで綺麗に見えて満足した。

 シルキーベージュのストッキング。ペディキュアはダークローズで。

 指にも胸元にも装飾品はなし、腕には時計の代わりに金の細いブレスレットを6連くらい通した。

 ピアスをつけて、カラコンは外す。今日は瞳の誤魔化しは必要ない。誰にいい訳しなくてもいいのだ。飲むお供は女友達、仕事でもない。

 少しブルーがかった右目が目立ってアンバランスな表情になる。でも、いいの。これが私。アンバランスが自分なら、これを受け入れて生きていかなきゃ。


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