黒胡椒もお砂糖も


 ――――――――ん?

 私は瞬きをした。そしてワンショットを頼んだ時に用意してくれた冷水を少し飲んで意識を呼び戻す。

 ・・・平林。って、えーっと・・・。ああ!あいつか、あの平林か!

 自分でも反応が遅かった。今晩はバーと女の子とキラキラの魔法にかかっているのだから仕方がないんだけど。

 メールを開くと簡潔な文。

『平林です。お疲れ様です。今晩なら都合良いのですが、尾崎さんはいかがでしょうか。急ですが、ハイと言って下さい』

 つい、げらげらと笑ってしまった。・・・やだわ、私ったら、こんな場所でバカ笑い。危ない危ない。

 でもどうよ、これ。ハイと言って下さいだって~、バカっぽいよ、スーパー営業平林!

 私は微笑んだままでボタンキーを押す。

「お疲れ様です。本日は外で女友達と飲んでおります、すみません」送信っと。

 そうか、忘れてた。旅行からも戻って、3月分は余裕で仕上げているんだろう平林さんは今晩は暇らしい。

 でも残念、今晩は私が予定有り―――――――――

 携帯をテーブルに置いて、またグラスに口をつける。するとすぐまた携帯が振動して驚いた。

 平林さんかな?早いなー、返信。もしかして両手打ちだったら笑える。

 想像してまた一人で噴出す。もう今晩は笑い上戸だよ~、ダメだ~!

 とにかくメールを開いて・・・・そして、笑いが止まった。

『俺がそっちに行ってもいいですか?迷惑じゃなければ』

 ・・・・おいおいおい、平林さん?め、め、迷惑とまでは言えないけど・・・え?何でくるの?来なくていいよ。やっぱり迷惑か!


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