黒胡椒もお砂糖も
でもそれをどう伝えればいいの?この今の酔った頭ではそんな高度なこと考えられませんけど。
私が携帯を持ったまま固まっていたら、陶子が戻ってきてしまった。
「あら?美香、何呆然としてるの?」
「・・・あー・・・ええーっと、ね・・・」
どう答えたらよいのだ!それすらも判らなくて途方に暮れる。すると片眉を上げた陶子が私の手から携帯を奪い取る。
「あ、陶子ったら!」
「何、この人。・・・平林?どっかで聞いたような・・・」
手を伸ばして携帯を掴もうとする私をスイスイ避けて、陶子は考える。そして美しく引いた眉をまた上げて、ああ!と言った。
・・・嬉しそうな響き。ちょっと、嫌な予感が―――――――・・・
「あんたが去年言ってたミスター愛嬌だ!思い出した、美形とペアでいるらしい、ええと・・・優秀営業だっけ?」
「こら、返して陶子!」
「何何、彼がここに来たいって?これはどういう事なのよ、美香?」
返して~と言えば、説明聞いたらね、と返事が来た。まだ立ったままで私の携帯を握り締め、陶子は妖しく微笑んでいる。
・・・酔っ払いめ・・・。私はため息をついた。
取りあえず座るように言い、それから仕方なく、説明する。ただし、簡潔に。
「・・・その、美形で優秀なもう一人の営業マン高田さんの営業手法を知りたいな、と思って。本人が平林さんに聞けって言うから、教えて下さいって言ってたのよ」