黒胡椒もお砂糖も


「ふむふむ」

「そしたら2月戦で忙しいから都合がついたらメールしますって言われて――――」

 私は自分の携帯を指差す。まだそれを握り締めていた陶子は、またふむふむと呟きながらメールの文章を読み直す。

 そしてニヤリと笑った。

 ・・・・魔女の企みか?私は酔った頭でそんなことを考える。

「いいじゃない、呼びましょうよ、そのミスター愛嬌を」

「・・・えっ!?」

 何だって!?

 パッと見上げると、陶子は嬉しそうに微笑んで――――――――勝手にメールを打っていた。

「ちょっと!陶子――――――」

「うるさいわね、高級バーで騒ぐんじゃないわよ」

 言い返しながら私に背を向けて、彼女はさっさとメールを打つ。

「こら、返してよ、あんた―――――」

「・・・行ってこーい」

 そう言いながら彼女は画面に向かってヒラヒラと手を振る。

 返信ボタンを押してしまったようだった。

 ・・・こらー!背中からドレス破るぞこの女ー!!本気でそれを実行しかけた私の胸に携帯を押し付けて、彼女はにこにこと言った。

「いいじゃない。彼はその美形じゃないんでしょ?私もスーパー営業に会ってみたいし、色々勉強させて貰いたいわ」

 私は慌ててメール画面を開いて陶子が何て打ったのかを確かめる。

「〇〇ホテルのスターライトバーに居ます。喜んで、歓迎しますよ~待ってまーす(ハートマーク)!!」


 ――――――――――・・・・・・ああああああ~・・・・。


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