黒胡椒もお砂糖も
すらりとした体には今日もぴったりとスーツが張り付いている。
・・・この人、本当に立ち居振る舞いが格好いいわ・・・。思わず心の中で呟く。
ただ立っているだけなのに目立つ目立つ。
そして、端整なわけではないにせよ、好奇心溢れ出るような愛嬌たっぷりの可愛い笑顔と鋭い知性が見え隠れする瞳。これが武器になって、この人はあれだけの契約を取るんだ、そう思った。
この人に警戒心を抱くなんてちょっと無理かもね~って。
彼に任せたら全部安心!人にそう思わせるような笑顔だ。
「・・・あ、お疲れ様です」
少しばかり見惚れてしまった私はハッとして、平林さんに挨拶をする。彼の目が一瞬で私の全身を見たのが判った。
男性が女性を眺める、そして評価を下す、そんな場面も久しぶりだった。緊張感と共に満足感も湧き上がる。平林さんの瞳の中には賞賛の光があるのが判ったからだ。
ソファーから立ち上がって後ろにきた陶子を紹介する。
「こちらは砂原陶子さん。私の大学時代の友人で、今はデザイナーです。平林さん。うちの支社のトップ営業マン」
陶子と平林さんが笑顔で近づく。自然に手を出した陶子と握手を交わし、自己紹介していた。
「平林です。折角楽しんでいるところに無粋者が乱入してすみません」
「砂原です。いえいえ、歓迎しますわ。女同士では既に十分話はしてますから。お噂は美香からよく聞いてます。凄いですね、保険会社でトップの営業成績を誇るなんて」