黒胡椒もお砂糖も


 どうでもいいのよ私の目の色なんてー!!腹の中ではバカ野郎ー!!って叫んでいたけど、こればかりは仕方ない。

 エレベーターには他の人もいるけど、すくなくとも私と彼女は同僚なわけで。しかも彼女は勤続20年のベテランさんなわけで。

 イライラが顔に出ないようにして私は何とか返す。笑顔がひきつったのは勘弁してください状態だ。

「・・・いえ、生まれつきです。普段はカラコンして隠してますけど。今日は同窓会で!」

 もう面倒臭いからそう言い訳したけど、あながち間違いではない。

 陶子も平林さんも同じ年なわけだから。

 彼女はひたすら、へえ~とか、全然違うわ~いつもそんな格好してればいいのに、などと言っては私を眺めていた。

 うるさい先輩だ!いつもこんな格好だったら仕事にならないでしょ!

 18階にやっと到着した。その頃には私の上がった息も呼吸も多少ではあるけどマシになっていた。

 お疲れ様です!と先輩より先にエレベーターを降りて、廊下をダッシュする。

 時間は9時半近い。まだ居るんだろうか、それとももう―――――――


 自分の所属する第1営業部はまだ笑い声が漏れていたけど、第2営業部は静かだった。

 ドアの前で急停止して、はためいて乱れたドレスの裾をパッパと直す。電気も半分は落としてあるようだ。静かだし、もしかして・・・。

 一度唾を飲み込んで、ドアの隙間からそっと覗く。

 広い空間をパーテンションで区切った中の、端のほうの席には明り。

 その明りに照らされて、高田さんが机に向かっていた。


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