黒胡椒もお砂糖も
・・・また、恋におちてしまったんだ。
この人生ではもう人を愛せないかもと思っていた。
だけど、好きな人が出来たんだ。
空から急に降って来たような、そんな印象の恋だ。
怖くて私は手を伸ばさなかったけど・・・・それでも、待っていてくれた。
2年前の離婚が原因で高田さんが私に目をつけたとは驚きだ。だけどこんなものなのかも。人の出会いって、そうしたちょっとしたことなのかも。
『失敗したら、また次に行くのよ』
陶子の言葉が蘇る。神の前で永遠を誓ったはずの夫から別れを告げられて、私は何を信じていいのか判らなくなっていたんだ。
この恋だって、永遠だとはまだ言えない。
だけどまた好きになったし、今はこの人の体温を感じている。
・・・大事なのは、永遠だとか、そんなことじゃないんだね、陶子。
今判ったよ、私。
そうではなくて、自分が心を捧げた人と、今の一瞬をしっかりと楽しむこと。それを毎日重ねていくこと。
人を愛せる自分を愛すること。
だから、もしうまくいかなくてもまた起き上がれると判っていること。
それが、大事なんだね。
高田さんの寝顔を見ながら、そんなことを考えた。
私はもう、この人が好きだって判ってる。それで今は十分なんだ・・・。